一年振りだろうか、それ以上だろうか、親戚みたいな、私が小っちゃい頃から知っているおばちゃんが来店。
ドアを開けた瞬間の彼女の表情が柔らかくって驚いた。もっとキツい印象があったからだ。前回いらした時も最初はやはりキツい感じで、しゃべっているうちに徐々に柔らかくなったような気がする。その前に会ったのはいつだろう。親父の葬式の時かもしれない。
『送別会があってね。ここの近くで。・・・ここはもう何年になる?』
「2年3ヶ月・・・くらいかな。早いよね。」
『早いねぇ。あたしが来たのは去年かな。もう一昨年の年末かな。・・・頑張ってるね。』
そうなんだ。彼女は私が店を続けていられたこと、この場所にまだいることがうれしかったみたいだ。それが彼女の表情が柔らかかった理由だと思い至った。
『みんなに会うこともないよね。ここでもいいから集まる機会を作ればよかのにね。葬式ん時ばっかい会ったっちねぇ。』
時の流れは川の流れのようだ。人の気持ちは川の石のようだ。流れていくうちに角が削れて丸くなる。彼女が持っていた負の思いもゼロに近付いているのが分かった。時間が解決するということを目の当たりにした。
カクテルを一杯だけ飲んだ彼女の会計は1000円。1万円札を出した彼女が言った。
『(お釣りは)よかよ。そのつもりで来たんだから。』
言葉には出さないが『ここまでよくやったね。』と頭を撫でられたような、『まだまだ頑張んなさいよ!』と背中をバシッと叩かれたような、そんな気がした。
彼女が帰った後、少しだけ涙が出た・・・。