黒澤明の名作、”羅生門”。下敷きになっているのは芥川龍之介の名作、”羅生門”・・・ではなく、同じく芥川の”藪の中”。設定に”羅生門”も使われているが、それは些細なことであり、物語は”藪の中”。
一人の侍が藪の中で死んでいた。彼に関係する三人の男女の言い分が食い違い・・・と言う物語。
観終えて思ったことは、人間は非常にエゴイスティックであるということ。
事実は一つしかないはずだ。しかし三者三様の物語がある。少なくとも二人は嘘をついている。もしかしたら三人とも嘘をついている。
ここで考える。果たしてそうなのだろうか?嘘とはなんだ?真実とはなんだ?
もちろん三人とも嘘をついているふうではない。三人とも真実を語っているふうだ。
各々の真実を。
つまり一つの事実も受け手が代わり視点が違えば、それぞれにとっての印象は自ずと変わる。そして各々にとってはそれが真実なのだ。誰が正しくて誰が間違いということはない。全てが真実なのだ。人の数だけ真実は存在するのだ。
映画の世界は、三人の言い分の違いを観せることで人間の業を浮き彫りにしておしまい。
しかしもしこれが私達の住む現実世界ならば、そこから先も続いていく。そんな時はできることならばお互いの真実をすり寄せ合い、つまり相手の真実も尊重し、ある程度は受け入れ、みんなが「ま、いっか。」と言えるくらいの着地点に辿り着きたい。
羅生門 デラックス版
/ パイオニアLDC
スコア選択: ★★★★★