私、以前ショットバーで三年弱ほど働いていました。変な辞め方をしたわけではありませんが、人間関係とは難しいものでして、辞めた後にいろいろゴチャゴチャあったようななかったような、なんだかわからないうちにこのバーのマスターとは疎遠になっています。ここ五、六年はお会いしておらず、街でそれらしい人を見かけたかなという程度です。
弊店を開店する際に、いいきっかけだから挨拶に行こうかとも思いましたが、「もし一年も持たずにに閉めちゃったらカッコ悪いな。」なんて実にやっせんぼな考えが浮かんでしまい、「一年経ったら挨拶に行こう。」と心に決めたまんま、開店から一年四ヶ月が過ぎている今日この頃です。
普段と同じように午後三時過ぎに自宅を出まして、最初の交差点で信号を渡ろうか渡るまいか逡巡していましたら、目の前を通り過ぎた人はどこかで見た人。「・・・・・・・・・!」そう、そのバーのマスターでした。
ここで躊躇したら確実に素通りしてしまうと思い、勇気を出してご挨拶。「こんにちは。」
一瞬、『誰?』って表情でしたが、気付いてもらえました。第一声は『太ったねぇ。』でした。「え?そちらこそ・・・。」という言葉はなんとか飲み込みました。
そして肝心の「あの、今ですね、自分で店をしていて・・・。」ということを伝えましたら、『ああ、聞いた聞いた。またね。』と、ご家族とどこかへ向かう途中だったらしく、信号を渡っていかれました。
あまりにもあっけない再会でしたが、「やっぱり私になんか思うところがあるのか?」それとも「ずーっと気にしていた自分が考えすぎだったのか?」などと思考は止みません。いずれにしても一度お会いしたことで、今までよりはハードルが下がりました。
近いうちにお伺いして、ほんとの禊をいたしましょう。