
川越宗一著、"熱源"。
1945年の8月、幌が張られたトラックの荷台に乗り、日本という新たな戦地へ向かうソビエトの兵士たち・・・。
第162回直木三十五賞受賞作。
序章から時は遡って第一章が始まる。
舞台は北海道。強制移住させられたアイヌの少年少女たち、ヤヨマネクフ、シシラトカ、太郎治、キサラスイを軸に描かれる。
第二章の舞台はサハリン。日本語で言うところの樺太だ。その地で懲役囚となっているブロニスワフ・ピョトル・ビウスツキの物語。
第三章でこの2組が出会い、長大な群像劇が幕を開ける。
本編の時代設定が日露戦争前後で、舞台が北海道で、アイヌが出てくるとなると、私の大好きな"
ゴールデン・カムイ"と丸被りの今作。確かにあれを読んでいたから諸々の理解が早かったのは間違いない。
しかしながらタイトルの"熱源"からのイメージで群像劇だとは思っていなかった。単独の主人公が何がしかの熱源を持って突っ走る系の物語だと思っていたので、読んでいてどうにも乗り切れなかったのは否めない。歴史にあんまり興味がないってのも原因だと思う。ただ日本初の南極探検隊の隊長が白瀬矗って名前だった時に「ん?もしかして南極に行く砕氷艦しらせってここから来てる?」って思ったくらいには興味あり。
『故郷』とか『文化』についての物語だというのは理解できるし(その辺は巻末の解説に詳しい)、直木賞を受賞したのも納得できるくらいの熱量を持った作品だというのも分かる。
ただ個人的におもしろかったかってなると、んーってなってしまう。もちろん好みの問題なんだろうけど。
もうちょっと軽めで没入感ありまくりの小説が私の好みらしい。