
横山秀夫著、"ノースライト"。
一級建築士の青瀬稔は大阪での仕事を終え所沢へと帰る新幹線内、事務所の所長である岡嶋昭彦から電話がかかって来て・・・。
一級建築士を主人公にして、その建築士が建てた家と一脚の椅子を巡るミステリー。主人公もニッチなら謎もニッチ。
そしてこの椅子がタウトの椅子かもしれないということで盛り上がるから頭の中は「なんだそれ」「誰それ」祭り。作中でも語られているが、ブルーノ・タウトは著名な建築家で戦前の数年間、日本に滞在していた。不勉強で名前すら知らなかったので新鮮。俄然、その椅子に興味がわいた。
知らないことといえば建築全般もそうで、そもそもが天文館生まれ天文館育ちゆえに一軒家に全く興味がない私なので、家に関する諸々がとても新鮮でおもしろかった。ちなみにノースライトってのは北からの光。南向きとか東向きなら採光は簡単だけど、立地的に北側からしか光が入ってこない場合は建築家としてはいろいろと頭を働かせなくちゃならないみたい。
読み終わってみたら「おもしろかったな」ってなるんだけど、最初の3分の1くらいはちょっとダルい。話が全く前に進まない。なのに描写がよく言えば緻密、悪く言えばくどいので、長々と何を読まされているんだろうって気持ちになる。
ただその分、終盤は一気に畳み掛ける。いろんなことが起こるし、いろんなことが判明、解決していく。なるほど、最初からここに向かっていたのかと納得する。そして謎解きの材料は読者にも公平にもたらされているのがニクい。いやー、気付かなかったのが悔しい。
この感想文を書くにあたってWikipediaを見てみたら横山秀夫は"半落ち"に関するあれこれで直木賞と決別したとあって、とても漢(おとこ)だなと思った。いいぞ、横山秀夫。