
ジュゼッペ・トルナトーレ監督・脚本、"鑑定士と顔のない依頼人"。英題は"The Best Offer"。
美術鑑定士、オークショニアとして成功を収めているヴァージル・オールドマン。多忙な中、電話で鑑定の依頼が入る・・・。
どういうわけだか私の頭の中では"
9人の翻訳家"とごっちゃになっていた今作。なぜか同じ1つの作品だと思い込んでいた。なのであっちを観たのでこっちも観なきゃと思って観た次第。
そしたら全然テイストの違う話だった。当たり前なんだけど。
鑑定士として成功を収めてはいるけれど、接触恐怖症でレストランのナイフとフォークも手袋をして持ち、何よりこの歳まで結婚はおろか恋愛経験すらないヴァージル。これはもう何が幸せで何が不幸せなのか分からない。
そんな彼が依頼されたのが女性の両親が遺したという多くの美術品の鑑定。しかし依頼人のその女性はずっと姿を見せない。これを邦題では『顔のない』って表現していて、顔がないわけじゃないんだけどなと思いながら観ていた。しかもずっと出てこないと思っていたら途中で出てくるし。
そして出てきたら出てきたでなんだか思ってたのと違う方向に話が進んでいく。あれ?これってもしかしてラブストーリー?てっきりミステリーだと思って観てたけど、老いらくの恋もいいものだ、みたいな話だったりする?なんか嫌だな。とはいえ、ずっと何かしら謎めいていて不穏ではある。
そしたら終盤で急転。やっぱりミステリーだった。
んだけども、どうもすっきりしない。"9人の翻訳家"みたいに「そういうことか!」っていう素直な驚きもないし、それ以前にちゃんと何が起こったのかが理解できない。どの時点から誰が何のためにっていう肝心な種明かしが明確じゃない。ヴァージルの肖像画の部屋が美術セットとしてあまりにもすばらしいのと同様、今作の演出も美しさに重きを置いている気がする。物語を描くよりも美しさ第一、みたいな。だから映像としてきれいだし、画面にずっと品があってそれはそれでいいのに、最後のオチの部分が分かりづらいという悲劇。ラストで来ない人を待つヴァージルの悲劇とも重なってダブルの悲劇。Wの悲劇。♪もういかないで そばにいて
ほら、『え?』ってなるでしょ。こんな感じ。