
山本周五郎著、"季節のない街"。
『その「街」へゆくのに一本の市電があった。』と始まる六ちゃんの物語、"街へゆく電車"を含む15編の連作短編集。
クドカン脚本のドラマ"
季節のない街"を観て、青空文庫にあるのは知ってたけど本屋で文庫を買って読んだ。
読んで分かったのは、ドラマは舞台を現代に置き換えてはいるけれど、大筋は全然脚色していないってこと。クドカン、この小説のまんま脚本にしてドラマにしてる。夫婦の交換話とかクドカンオリジナルでしょって思ってたけど、ドラマで観たまんまが書いてあった。今更ながら、そして私如きが言うことじゃないんだろうけど、山本周五郎って凄い作家だな。おもしろいわー。しかも文章が平易で読みやすい。これはとても大事なこと。
んでもってドラマの配役がめちゃくちゃビンゴだと読みながら唸っていた。六ちゃんは絶対に濱田岳だし、そのお母さんは片桐はいりだし、夫婦交換の増子兄ィと荒川良々はハマり過ぎだし、ホームレスの父親なんて完全に又吉だった。
と、ドラマと比べての今作になってるけど、本当は逆で、この原作があってこそのドラマだったわけで。なんなら黒澤明監督の"どですかでん"だってそうなわけで。まだ観てないけども。
だから今作で描かれているこの街の住人たち、自分を偽る暇も金もない人たちの悲喜劇がそれだけのパワーを持っているってことである。そしてそれらを描くというより、どこかしら温かく見守っているような著者の目線がとてもいい。
これが50年以上前に書かれた作品ということに改めて驚く。まさしく不朽の名作と呼ぶに相応しい一冊。