
柞刈湯葉著、"人間たちの話"。
多孔質の岩石を棲家とする有機分子は、言葉を弄する哺乳類の一種が進化の枝先にふっと現れる以前から存在しており・・・。と始まる表題作を含む6篇のSF短篇集。
まず作家の読みも分からない今作。【柞刈湯葉】と書いて【いすかりゆば】と読むそう。
そしてどうして私が今作の存在を知ったのか。これが実のところ私にも謎なのである。というのもある日、スマホのネットアプリを開いたところ、今作を検索したページが残っていたのである。いつ、どこで、誰から、どうやって知ったのか。それは今も分からない。思い出せない。
もしかしたらある日ただパッと私のスマホの検索ページに現れたのかもしれない。だとしたら実にSF的な現象だ。うむ、そうだ。そう信じたい。
なので、どうして知ったかはこの際どうでもいい。今作のことが私のスマホに存在していた、その事実だけが私を書店へと向かわせたのである。
"猿の惑星"っぽく始まって終わりのない旅のような"冬の時代"。
"
一九八四年"みたいな設定だなと思ったら解説に自分で『冒涜的パスティーシュ』って書いてた"たのしい超監視社会"。
表題作である"人間たちの話"。
宇宙で評判になりつつある太陽系のラーメン屋というぶっ飛んだ設定の"宇宙ラーメン重油味"。
冒頭に書いてある通り、マグリットの"記念日"を画像検索してから読んだのでイメージしやすかった"記念日"。
全中学生男子の夢でありながら、でも本当にそうなったらこんな感じかもよと教えてくれる"No Reaction"。
どれもおもしろく読んだけど、私のフェイバリットは"宇宙ラーメン重油味"。コントにもなりそうだなと思ったら、解説に漫画原作用のプロットを小説にしたとあって納得。とても漫画っぽい。
どうして知ったかは分からないけど、知れて、読めてよかった。そんな一冊。