ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、"サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福"上下巻。
およそ140億年前、ビッグバンが起こり宇宙ができた。およそ40億年前、地球上で有機体ができた。そしておよそ7万年前、ホモ・サピエンスという種に属する生き物が文化を形成し始めた・・・。
人類の歴史に始まり、そして我々はどこへ向かうのかを記すノンフィクション。世界的ベストセラーにして記念碑的名著(とのこと)。
確かにめちゃくちゃおもしろい。「なるほど、そういうことか」と、膝を打つことしばしば。目から鱗が落ちまくる。
けれど難しかったり長かったりするところも多々あり、途中ただ文字を目で追ってるなんてこともありつつ、それでもおよそ2ヶ月かかって上下巻を読了。難しいんだけど、おもしろいからやめられなかった。
およそ7万年前の認知革命が最大の転換期。【虚構】を共有できるようになったことが凄い。これに宇宙人が介在していたとしても「だろうな」くらいにしか思わない。それくらいホモ・サピエンスの歴史におけるマイルストーン。
そしておよそ1万年前の農業革命、およそ500年前の科学革命とホモ・サピエンスは歩みを続けてきた。数を爆発的に増やし、生活を便利にし、同時に地球上のあらゆる動植物を絶滅させてきた。
ホモ・サピエンス全体としてはそれでいいのかもしれないが、じゃあ個々の幸福はどうなんだ?と問えば、これでいいとは言い難い。7万年前、1万年前、500年前の方が幸せだったんじゃないかと勘繰ってしまう。
確かに、少ない情報しかなく、その分やるべきことも少なく、やれることも少なく、けれど1日の長さは今と変わらないのだから、寝て起きて狩猟して採集してご飯食べてまた寝てって生活になるわけで、それはそれで幸福度は高かったんじゃないかと思う。他に知らないんだし。比べようがないし。
となると今はどこまでいっても不幸だ。今の自分より上の暮らしを目指し到達したとしても更に上がいることを知っている。だから更に上を目指す。現状に満足することはない。どこまでいっても不幸。
結局、自分がどこかで満足するしかない。それしかこの不毛な上昇志向のレールから逃れる術はない。
でもそのレールから逃れられないのがホモ・サピエンスで・・・というのが今作を読んでの結論。認知革命はまだしも、農業革命の時点でこの未来は決定していたように思う。あそこが不幸の始まりだったのかもしれない。
そしてそんなホモ・サピエンスに明るい未来はあるのか?ってのが最終章。
こうなると「ないな」としか思えないし、そうだと書いてあるんだけど、その理由がまた目から鱗。まあ本当にそうなったとしても今までのホモ・サピエンスの行いを振り返れば、受け入れて当然としか思えない。来世紀なのかその次の世紀なのか、はたまたまだまだ先なのかは分からないけど。
とりあえず今を生きる私は今作をおもしろく読んだ。それは確かな事実。