大沢在昌著、"黒石(ヘイシ) 新宿鮫Ⅻ"。
とある組織の組織再編の声明文。日本語と中国語で書かれている。
9月に入ったがまだ蒸し暑い夜、帰宅途中の鮫島は自宅近くの自販機前でこちらを伺う男を見付け・・・。
今作は昨年末に刊行されたので
前作から3年半くらいでの新作となる。
そんな"新宿鮫"ももう12作目。もしかして私、いつの間にか鮫島の年齢を追い越してる?なんて思ったりする。
ここ数作で出てきていた中国残留孤児2世3世のグループ【金石(ジンシ)】との真っ向対決。きっかけとなったのは黒石という殺し屋の存在。
黒石、キャラクターも武器もなかなか個性的で、帯にあるように最凶最悪の殺人者。勝てるどころか逃げられる気がしない。
対する鮫島は一匹狼のようでいて、実はそうではない。今作では前に裏切られた矢崎と組むことになり、新しい課長である阿坂とも信頼関係を築けており、新宿署にいるのが当然だと思っていた藪への認識が改まり、チームとして成立している。
相変わらず物語の引きが強く、ぐいぐい読ませる。ぐいぐい読ませるからぐいぐい読んで、そしたらだんだん残りのページ数が少なくなっていくのが不安になっていく。あとこのくらいしかないのにちゃんと解決する?と。
安心してください、解決しますよ。
けど最後はまあまあスピーディー。一気に風呂敷を畳んだ感はある。物足りなくはないんだけど、もうちょっと粘ってもよかったんじゃないかとは思った。
何はともあれ今作もおもしろく読んだ。文体というか文章が自分に合ってる。しっくりくるというか。
と、そんなことを思えるのも"
一九八四年"とか"
あなたの人生の物語"を読んだから。難しいと感じながらも読み終えた意味はこういうことなのかもしれない。
さて、今度鮫島に会えるのは何年後だろう。また新宿で駆けずり回る姿を待ち望むことにしよう。