都築響一著、"ヒップホップの詩人たち"。
2011年、東京にこだわらなくとも地方で作品を作って売ることができる時代になった。筆者はヒップホップに焦点を当て、地方に住むラッパーの元へ出向きインタビューを試みる・・・。2011〜12年の月刊文芸誌【新潮】の連載をまとめたもの。
15人のラッパーへのインタビューと生い立ちの記録、そして詩。
知ってるラッパーもいれば初めて知るラッパーもいる。ただ、その誰もが平々凡々な生き方をしてきてはいない。何かが足りず、何かを失い、何かを求めて、何かになろうとして、抗い、戦い、傷ついて、傷つけて、ここまで歩いてきた、その記録がここにある。
だからこそ、どの詩もグッとくる。こんな生き方をしてきた彼や彼女だからこそ、こんな言葉を放つんだ。そこにとてつもない説得力がある。よく言われる、ラップは誰の口から出たかが大事ってことに合点がいく。
2011〜12年のインタビューだから、まだZORNはZONE THE DARKNESSって名乗っていて、爆売れする全然前。親父さんとおじさんと一緒に昼間の仕事もしていて「普通の生活」を営んでいる頃。
この先の紆余曲折を知っているからこそおもしろい部分もある。けど、同時にちょっと寂しくもある。この頃のZORNが好きだから。
ということも含めて、2024年版の"ヒップホップの詩人たち"を読んでみたい。今作のラッパーたちのその後、新たなラッパーたちの記録と詩。とんでもない熱量の塊になるだろうな。