韓国映画”グエムル 漢江の怪物”を観た。監督のポン・ジュノは、今、世界中で新作を待望されている映画監督の一人だ。”ほえる犬は噛まない”、”殺人の追憶”とミステリー色の強いエンターテインメントドラマを撮った彼の新作が怪獣モノとは思わなかった。
しかしそこはやはり普通の怪獣モノとは一線を画していた。”エイリアン”が顕著な例だが、映画的な正体不明の生物というのは、引っ張って引っ張ってドーンと登場するのが定石だ。ところがグエムルときたら、開始早々ガンガン暴れまくる。漢江に集う人々、観客である我々を一瞬唖然とさせ、その後恐怖のドン底に叩き落す。
立ち向かうのはさらわれた少女の家族。単なる怪獣モノでは終わらず、家族の繋がりを描いていると言う側面もある。そこをきちんと描いているので、映画的なご都合主義もビシッと決まる。
そしてこの作品は9・11以降のアメリカの迷走に対する痛烈な皮肉でもある。断罪といってもいいかもしれない。ひょっとするとポン・ジュノはそれが言いたいだけだったりして・・・とも思う。
つまり政治的なテーマはオブラートに包み、バリバリのエンターテインメントとして成立させ、ドラマ性も内包している作品。怪獣モノに主軸が寄っているぶん、”殺人の追憶”ほどの完璧さはないが、素晴らしく立体的な映画であることは間違いない。
ある評論家は言った。『黒澤明の生まれ変わりは韓国に誕生していた。』と。
ポン・ジュノ、この名前を覚えていて損はない。
殺人の追憶
/ アミューズソフトエンタテインメント
スコア選択: ★★★★★
ほえる犬は噛まない
/ ビデオメーカー
スコア選択: ★★★★