三宅唱監督、"ケイコ 目を澄ませて"。原案は小笠原恵子の自伝、"負けないで!"。
2020年12月、東京。先天性の感音性難聴で両耳とも聴こえない小河ケイコは、下町のジムに通うプロボクサーでデビュー戦は勝利していて・・・。
耳が聴こえないっていう状態は、つまり無音の世界なわけで、今この観ている映画の世界の雑音すらも全て彼女は聴こえてないわけだ。
だから彼女はいろんな声をスルーする。レフリーの指示も、セコンドのアドバイスも。そして声をスルーすることに慣れ過ぎて、人の気持ちを想像することもない。仕事の同僚が困っていても気付くことがない。
ボロボロになりながら2勝目をあげたものの、母の心配もあって、いつまで戦うべきか悩むケイコ。時を同じくしてジムの閉鎖がアナウンスされる。けれど次の試合は目の前に迫っている。諸々の葛藤の中、彼女は勝利する。
その勝利への道程で彼女は気付いたんだろう。自分だけじゃなく、みんな何かを抱えていること。みんなに想いがあること。みんながもがいていること。
耳が聞こえない彼女が、目を澄ませたからこそ至った境地。どこへ向かうかは分からないけど、また走り出した彼女にエールを送りたい。
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百円の恋"の時も思ったけど、俳優って凄い。あんなに動きや身体までボクサーになり切れるだなんて。しかも今作じゃ声での演技が封印されているわけだし。岸井ゆきの、すばらしい。