宮島未奈著、"成瀬は天下を取りにいく"。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と、中2の1学期最終日に成瀬が言い出した・・・。と始まる"ありがとう西武大津店"を含む滋賀を舞台にした6編の連作短編集。
まずタイトルが最高である。内容をよく知らないまま、タイトルに惹かれて購入したと言ってもいい。そしたら内容がタイトルに全く引けを取っていなかった。
各編の主人公というか語り手は様々だが、この1冊を通しての主人公は間違いなく成瀬あかりだ。彼女のキャラクターが抜群で、魅力しかない。帯の「かつてなく最高の主人公、現る!」の文言に偽りなし。このキャラクターを創出したことで、この小説のおもしろさは保証されたも同然である。
中2の女子が夏休みの8月は毎日、8月31日で営業を終了する西武大津店に通うと宣言する。なんて突飛で、なんて馬鹿馬鹿しくて、なんて清々しくて、なんて素敵な宣言なのだろう。こんな青春があってもいいじゃないか。こんな青春を肯定できる大人でいたいと思った。
そして成瀬の快進撃は続く。いや、あくまでも読者である私にとって快進撃なだけで、当の成瀬は至ってマイペースで、自分が興味のあること為すべきことをただただ真摯にやっているだけだ。その様が少しもキラキラしてるわけじゃないのに、なぜか美しい。
ああ、成瀬の行く末を是非とも読みたい。成瀬は200歳まで生きるそうなので最後までは読めないかもしれないけど、
若竹七海の葉村晶シリーズみたいに、成瀬の年齢を上げながら書き続けて欲しいと切に願っている。