アンディ・ウィアー著、"アルテミス"。
EVA(船外活動)のテスト中のジャスミン・パシャラは灰色の埃っぽい地面をぽんぽん飛び跳ねて進んでいる。そこは月面都市アルテミスの外の空間で・・・。
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プロジェクト・ヘイル・メアリー"を読んで"
火星の人"を読んで、となるとアンディ・ウィアーの2作目である今作を読まないという選択肢はない。けれどここで危惧すべき点が1点。今作は他の2作ほど話題になっていないのである。
で、読んでみるとちょっと納得。設定と物語の進み具合が違う。他の2作は似てるのに。
今作は完全に月面都市アルテミスが舞台。なので主人公は1人ぼっちじゃないジャズことジャスミン・パシャラ。このジャズが密輸業者で、大金欲しさにクライアントの無理難題な仕事を引き受けるところから物語は転がっていく。いろんな人に頼ったりしつつ、騙されたりしつつ。
なので月を舞台にした犯罪ものと言える。もちろん舞台が月であることの合理的な意味はちゃんとある。そこで起こる諸々、クリアせねばならない諸々も月であるから故である。だから筋は通っている。
んだけども。
他の2作が直線的というか、どんどん前に前に進む物語だったのに対し、今作は2次元的に広がっていく感じなのである。関わるキャラクターも多いし、それきっかけで事件も起こる。そしてその影響がアルテミス全体に広がっていく。
つまりジャズは主人公なんだけど、彼女の行動だけで物語が進んでいくわけではない。ここが他の2作と大きく違う。あと前半は私欲であって使命ではないってところも違うか。
だから感情移入が他の2作よりはしにくいし、ワクワク感とかドキドキ感も薄い。比べたらってことで、全くそうじゃないってことではないんだけど。他の2作がすばらし過ぎたが故のこんな印象なのが非常に申し訳ない気がする。
なんにしてもアンディ・ウィアーの次作は絶対に読む。出たらすぐ読む。それだけは確実。