アンディ・ウィアー著、"プロジェクト・ヘイル・メアリー"。
『2足す2は?』と訊かれている。コンピュータの声に。答えようとするが口がうまく回らない。目も開けられない。どうも私は酸素吸入マスクを付けているようだ・・・。
巻頭にヘイル・メアリー号のロケット図がある。それを眺めてから本文を読むことになるので、読者は冒頭の主人公の状況を予想できる。彼は宇宙船ヘイル・メアリー号に乗っているのだと。そしてそれは正しい。
しかしそんな読者のアドバンテージなどすぐに霧消する。そして主人公グレースと共にミッションと謎を抱えた宇宙旅行をすることになるのである。
物語の構成としては、主人公が現状を理解してミッションクリアに努める現在パートと、記憶を少しずつ取り戻すことで描かれる過去パートがだいたい交互に語られる。
これこれこういう流れで読み始めた今作。
いやもう最高でしょ。たのしいたのしいたのしい。こんなにワクワクする楽しい読書体験が50歳になってもできるだなんて。
読み進めていくのが楽しいし、読み終わってしまうのが寂しい。薄くなっていく残りページを見ながら、この物語に最適な結末なんてあるのかと危惧しつつ。
一か八かのミッションを前にして科学的論理の積み重ねで物語は進んでいく。とはいえSF、つまりはサイエンスフィクションだから創作物なんだけど、説得力があり過ぎて本当っぽくて、あらゆることが数年先、数十年先に起こることなんじゃないかと思いながら読んでた。怖い。でもおもしろい。
いやー、未来に幸あれ。そして宇宙に希望あれ。