辻真先著、"深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説"。
昭和12年、那珂一兵少年は銀座で似顔絵を描く店をしている。4軒先から聞き飽きた"東京音頭"のメロディーが流れてきたところに、知人の帝国新報の記者、降旗瑠璃子がやってきて・・・。
辻真先という名前は目にしたことはあったけど読んだことはなかった。
そしたら帯にあるように"たかが殺人じゃないか"という作品が2020年のミステリランキングで3冠を獲得。これは読んでみたい。となるとその前に前日譚である今作を読んどくべきなんじゃないかと思って読んだ次第。
舞台が昭和12年の銀座に始まり、当時開催されていた『名古屋汎太平洋平和博覧会』の地である名古屋へと移っていく。
まずこの時代設定にのれなかった。昭和初期、満州事変前夜の時代。これは作品がどうこうってよりも馴染みが薄い私のせい。
当然言葉も文化もちゃんとその頃のものになっているので、のれないまま物語は進行していった。
ゆえに読むのにとても時間がかかった。
読み終えて思ったことは、この時代だからこそのトリックであり動機であり事件であるということ。つまり、この時代だからこその物語で、この時代だからこそのミステリなのである。
全てに意味があった。伏線も見事に張ってある。キャラクター造形もしっかりしている。
ただ、私はのれなかったなー。残念なことに。
なので、そもそものお目当てだった"たかが殺人じゃないか"を読むかは微妙。文庫になってから考えよう。