アリ・アスター監督・脚本、"ヘレディタリー / 継承"。
ミニチュア模型作家アニーの母が亡くなった。母とは仲が悪く、知らないことがたくさんあり、その葬儀にもアニーの知らない人々がたくさん来ていた。娘はおばあちゃんっ子だったので、自分の面倒は誰が見てくれるのかと訴える・・・。
母の死とその家族構成の説明で始まる冒頭から不穏な空気が漂いまくっている。
娘であるチャーリーの存在がまた不穏。「変わってる」の一言では済まない何かを秘めている。
夫はいたって普通っぽい。息子のピーターはパッとしない。何もかもがとぼれん男子。
そして当のアニーは神経症っぽい。と思っていたら物語が進むに連れて、その辺の詳細が分かってくる。
そして途中でとんでもんなくショッキングなできごと。ここで鑑賞をリタイアする人続出だと思われる。
そこからは死霊によるホラー展開かと想像していたら、どうにも違うっぽい。終盤になっても全く展開が読めない。
ただ、多くの伏線が張ってあって、それを最初は地味に、そして徐々にスピードを増しながら回収していく。緊張感がハンパなくなってくる。
・・・また突然の戦慄の光景。そしてその先には。
最終的に想定外も想定外のところに着地する物語。【継承】っていうのはそういうことかと自分なりに納得した。この「自分なりに」ってのがポイントで、その辺の説明が明確にされるわけじゃなく、作りとして親切ではない。
ただめちゃくちゃ怖いのは間違いない。ずっと不穏。ずっと不安。ずっと謎。読めない怖さってのがあるんだなと思った。
主役のアニーを演じるトニ・コレットの演技が見事。人の心理として非常に理に適った演技だと思う。表情の急激な変化も凄かった。
そしてチャーリーの圧倒的な存在感。子供?娘?みたいなところから始まる異物感。あまり味わったことのない怖さの根源は間違いなく彼女だ。
それらと比べるとこの"ヘレディタリー"は純粋なホラーのまま結末を迎えた。そこが【21世紀最高のホラー映画】などと呼ばれる由縁なのではないかと思う。
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ヘレディタリー / 継承" ★★★★