友だちがこんなことを書いていた。
この彼に私が容易にかけられる言葉はない。
代わりに自分の仕事のことについて思った。
以前、御大が足繁く通ってくれていた頃、私に度々おっしゃっていた。
『ガク、わいげん仕事はよかねぇ。おまえがお金をもらっちょっとに、お客さんから「ありがとう」ち言わるらいよ』
聞いた瞬間はピンとこなかった。それが当たり前のようになっていたからだ。言わば感覚が麻痺していると言ってもいい。
だから改めて考えてみた。うん、確かにそうだなと思えた。ありがたい仕事だ。
時が経った。
今現在、御大と同業の同級生が来て私に問う。
『ガクちゃんはさ、この仕事をいつまでするの?いつまでしたいの?』
いつまで?・・・できるんだったらずっとしたいな。歳をとってもできる仕事だと思うし。
みたいな答え方をしたら、同級生は言った。
『じゃあこの仕事が好きなんだね。俺なんか今すぐ辞めたいもん。まあでも収入はあるわけだし生活があるからそうはいかないけど』
ほ〜、やっぱりそうなるか。業種によって違うんだろうけど。にしても辞めたい仕事を続けるのはしんどいな。
社会的地位があって収入も私なんかとは桁違い。そんな仕事をしていても辞めたいと思う人たちがいる。
方や私。街はずれの吹けば飛ぶようなちっぽけな呑み屋の店主。暇な日々に怯えながらも、その実、いらした方々とは飲みながら楽しくやっている。こんな日々がずっと続けばいいと心底思っている。
いらした方に『ありがとう』って言われる仕事。
しかもである。やれ周年だ、やれ年末だ、やれ新年だ、やれ誕生日だ、なんて時には、何かしらのプレゼントまでいただいちゃう。
昨年末なんて『今年はなかなか来れなかったからさー、もう1杯なんか飲んでよ』なんて言われる。お土産ももらったのに、その上で。
結婚してすぐの頃、そんなしていただいたものを持って帰っていたらワイフがとても驚いていた。そんなにもらうの?って。ていうかあなたが贈る方じゃないの?って。
言わんとすることは分かる。でも、なぜかみんなくれるんだよなー。ありがたい限り。
そんなワイフも今じゃ『そろそろチョコとか誰かくれないけ?』ってのたまうようになった。それこそ今日なんて昨日いただいたカステラにご満悦だった。人は慣れる。
とりあえず今、こんなご時世でも、私は楽しく仕事をしているし(もちろんそんな時ばかりじゃないのは当然として)、できる限りずっと続けたいと思っている。
ごきげんよう。