Netflixオリジナルドラマ、 "クイーンズ・ギャンビット"。スコット・フランク脚本・監督。
1967年のパリ。ドアをノックされて目を覚ます女性。慌てて身支度を整えて同じホテル内の別フロアへと急ぐ。多くのカメラのフラッシュを受け、チェスのテーブルに着く・・・。
幼少時代へと遡る。橋の上で交通事故に遭い、女の子だけが生き残り・・・。
エリザベス・ハーモンが9歳で孤児院に入所するところから物語は始まる。変わった女の子であるベスはチェスと出会い、その才能を瞬く間に開花させ、大人たちを、男たちを負かしていく。気持ち悪いチェスオタクの少女が、オシャレで美しくて聡明な女性に成長していく様には素直に感動する。
そしてなんといってもこの1960年代のアメリカという時代が見事に表現されていてすばらしい。衣装、美術、セット、車、どれもこれもが完璧で美しく、その世界は静謐でありながら気品がある。画面がとても贅沢。
それに加えて音楽の使い方がめちゃくちゃカッコいい。ただのBGMかと思いきや、ちゃんと劇中でも流れている設定ってのに気付いた時は声が出た。とても洒落た演出。
主演のアニャ・テイラー=ジョイを始めとする俳優の技術もスタッフの技術もすこぶる高く、その妥協のなさ、隙のなさゆえに完璧な世界が構築されている。
父親はおらず、実の母を失い孤児になり、幼い頃から薬に頼らざるを得なかったベス。彼女はずっと孤独で、感情というものをどこかに置き忘れていた。
それが徐々に、本当に少しずつ、人間らしくなっていく。それは引き取ってくれた義母のおかげでもある。義母は義母で孤独だったけれども。それゆえのアルコールだった。ギブソン、久しぶりに飲んでみたくなった。ベスと義母、共依存ながらも良好な関係だった。
けれどまたベスは失った。彼女は常に失っていく。そりゃ薬にも頼るだろう、そりゃアルコールにも溺れるだろう。共感できた。
だからパリでズタボロになったのも納得。帰国してからの日々も納得。これぞ孤独。誰にも理解されない、理解されたくもない絶対の孤独。これが最終回前。
ここからどうやって盛り返して、どうやって納得のいく結末に導いてくれるのか。
ベスのチェスは定石通りではない直感型のチェス。けれどこの物語は定石通りだった。『みんな』ってワードが転機だった。その前のシャイベルさんのくだりからヤバかったけど、あそこからの流れにはらはらと涙が止まらなかった。勝敗が決した後のボルゴフの立ち居振る舞いも素敵だった。
最終的にみんないい人という私の大好物の物語。満足。ラストも思っていた通りでよかった。おっちゃん(シャイベルさん)に始まり、おっちゃんたちに終わる。良き。
シーズン2を望む声は多いだろうけど、これはこの完璧なままで完結して欲しい。というのが正直な気持ち。