我孫子武丸著、"殺戮にいたる病"。
エピローグ:蒲生稔は逮捕された。通報したのは樋口だった。その場にいた雅子は泣き叫んだ後、茫然自失としていたが・・・。
いきなりエピローグである。始まりなんだからプロローグなんじゃないの?って思って見返したけど、やっぱりエピローグだった。そして第1章を読み始めて納得した。過去に遡って物語が始まった。
まずは【二月・雅子】、そして【前年・稔】、【一月・樋口】と、3人それぞれの目線で、それぞれの時から物語が始まった。おそらくエピローグへ向けて。
完全にジャケ買いというか表紙買い。このドクロマークの表紙が解散から17年経った今でも私が最も愛するバンド、TMGEのロゴマークに似てるなーと思って手に取った。そしたら帯に『これを読まずにミステリーを語るなかれ。』なんて書いてある。これも縁だし、そこまで言われたら読んでみようかと思った。割と本との出会いは大切にする派。
読み始めると代わる代わる現れる3人のパート。これが3人目を読み終える頃には1人目のパートが気になってくるので、かなりテンポよく読み進めることになる。それぞれがそれぞれのドラマと役割を備えているために、事実は1つでありながらも3つの物語のようでおもしろい。
しかも帯的にはミステリーとして傑作だという触れ込みである。となると読んでる私も馬鹿ではないので、どういうタイプのミステリーかは分からないが、おそらく最後に驚愕の事実が明かされるパターンなのは間違いないと予想する。なので、それがどういう事実なのかを推理しながら読み進めた。
そしたら「おや?」と思うところがあるのだ。3人の描写の中で微妙に齟齬が生じていることに気付くのである。
こうなると気分は名探偵。その齟齬の意味するものとは・・・。描かれていない真実とは・・・。
そんな推理をしながら読んだものの、全くもって正解に思い至らず。整合性のある答えに辿り着かないまま最後のページを繰った。
驚愕。
しばし呆然。そして思い出して冒頭のエピローグを読み返す。そうだ、これは確かにエピローグだ。
そのまま第1章の冒頭を読み返す。・・・なるほど。そうか、この時点で仕掛けられていたのか。納得。
帯の文言は誇大表現ではなかった。確かに上質で鮮やかなミステリーだった。
けれど所々で相当にグロくてヘビーな描写があるので、あまり人に胸を張って勧められるような作品ではない。私の倫理観を疑われそうである。
あと今作は1992年の作品なので、バブルの香りが漂っている箇所がちょいちょいあり、そこに違和感を感じてしまう。もちろん携帯電話も普及していないし、防犯カメラも今ほど普及していない時代の話だ。あ、逆に今ならまだ読めるって言い方もできるな。
しかしながら今回のジャケ買いは正解だった。こうしてたまに当たるから止められない。
・・・ていうか今回、私がずっと表紙だと思っていたものは表紙大の帯だったっぽい。その下にちゃんとこの表紙があった。この表紙だと手に取ったとは思えない。
なのでやっぱりジャケットは大事。