早見和真著、"店長がバカすぎて"。
武蔵野書店吉祥寺本店における山本猛店長の朝礼スピーチに辟易している契約社員谷原京子は、あまりのイライラっぷりに生理が近いことを思い出し・・・。
タイトルにもなっている"店長がバカすぎて"から始まり、"小説家がバカすぎて"、"弊社の社長がバカすぎて"、"営業がバカすぎて"、"神様がバカすぎて"、"結局、私がバカすぎて"と連なる常に誰かがバカすぎる6編の連作短編集。書店が舞台で書店員が主人公。
本への愛が溢れている1冊。本が好き、本屋さんが好き、本屋さんの人が好き、な人には堪らない1冊。
文章が軽くて非常に読み易い。すいすい読み進められる。そしてまあまあ今後の展開の予想も立てられる。
けれどもそれでもそんなでも、ちょいちょいうるっとくるくらいのいい話、いい展開、いい台詞があるから本ってものは不思議だなと思う。
1冊を読み終えて、1行でも1フレーズでも感動したり印象に残ったりしたら、それだけでこの本を読む価値はあったんだと思う。それが本というもの。
だからそんな本を売ろうと、自分が好きな本を届けようと、人知れず躍起になっている書店員さんにフォーカスしたこの本がおもしろくないわけがない。
好き嫌いで言ったらあんまり好きなタイプの本じゃないのに、おもしろく読んだポイントがいくつもあって、なんかしてやられたというか、おもしろさの前にひれ伏すしかないというか、素直にそれは受け入れざるを得ないというか。
最初は文章が軽すぎるんで舐めてたけど、内容はしっかりしてる。メッセージがちゃんとある。これを読んだ書店員さんたちは『分かる分かる』の共感の嵐に違いないって率直に思える。
直木賞には程遠いし、本屋大賞もどうかなって思うけど、本や本屋さんが好きな人には読んでみてもいいんじゃない?って言いたくなる本なのは間違いない。