佐々木譲著、"笑う警官"。
警官は日誌の最後に『私はうたっていない』と記し、腰の拳銃に手をかけた・・・。
佐伯宏一はゆっくりと手を上げて丸腰であることを示している。目の前には若い私服刑事を羽交い締めにして拳銃を突き付けている容疑者がいて・・・。
以前から機会があったら読みたいなと思っていた作品で、本屋の棚に並んでいたのを見て思い出して手に取った次第。
序盤、次々に出てくる登場人物に大丈夫かなと思ったけど、ちょうど認識できる範囲で収まったので安堵した。
舞台は北海道。実際にあった北海道警察の裏金事件に着想を得たサスペンスなんだけど、このサスペンスっぷりがめちゃくちゃサスペンス。
主人公にして捜査の指揮を執る佐伯宏一が非公式の捜査チームを組む時点から事件解決までのリミットまでがたった一晩しかない。その事実を知って本の残りの厚みを見直してみたら、「え?これだけ全部が一晩なの?」ってなった。そのくらい詳細に時間経過と捜査状況が描かれていく。
というスタイルのめちゃくちゃサスペンス。ハラハラドキドキが止まらないから2日で一気に読み終えた。おもしろかったー。
んだけど終盤、それまで完全に先の先を読み切っていたはずの佐伯宏一なのに、ここにきてなぜそこを読み切れなかった?という大問題。私でもそのことは危惧してケアすると思うんだけど。まあでも物語の結末としてはそうなるのがいいのかな。闇があるっぽくて。
そこはそれでいいとして、やっぱりタイトルが納得いかない。2004年に刊行された"うたう警官"が映画化された際に"笑う警官"と改題され、それを受けて2007年の文庫化の際に同じく"笑う警官"に改題されたそう。
けど今作を読む限り、間違いなく"うたう警官"なんだけどな。"笑う警官"だと、それって結局最後の最後ってことにならない?しかも誰が"うたう"のか"笑う"のか全然違う話になってない?そしたら視点が違うからメッセージとしても違ってこない?なんか納得いかない。
そんなこともあって今シリーズの続編よりも、実際の北海道警察裏金事件に迫ったノンフィクション、北海道新聞による"追求・北海道警「裏金」疑惑"を読んでみたい私である。