ポン・ジュノ監督、"パラサイト 半地下の家族"。
無職のキム・ギテク、妻のチュンスクからの当たりも強い。息子のギウは大学受験に失敗し続け、娘のギジョンは美大に行きたいが予備校に通う金がない。そんな4人家族は、いろいろと不便な半地下の部屋に住んでいる・・・。
観終わってすぐに思った。これは"
ジョーカー"と同じじゃないかと。
格差社会における問題を描いており、主人公(たち)は真面目に暮らすも貧困にあえいでいる。
大雨が降る中、どこまでも階段を下りていく家族。あの階段を下りるって行為が、かりそめの豊かな暮らしから本来の貧しい暮らしへと戻るってことを表現していて、非常に映画的だと思った。"ジョーカー"の場合は、ジョーカーとしてダンスしながら階段を下りることが、諦念の末に覚悟を持って堕ちることを意味していた。階段を下りるという行為がメタファーであるという共通項。
そして笑う男。危機に瀕して笑う男。全くもって同じ。
そしてラスト。今作ではさすがに曖昧さを回避していたが、編集によっては"ジョーカー"同様、これはどっちにとればいいんだ?ってなると思う。ハッピーエンドのような幻。
と、こういった点から観終わった時点で"ジョーカー"じゃんと思った次第。
奇しくもこの2作、今シーズン世界的な評価を得ており、名だたる映画祭や賞レースで受賞している。もうすぐあるアカデミー賞でも争う事必至の2作だ。
てことはあれだ、格差社会とか貧困とかってのは世界共通の今の問題ってことだ。映画は社会を表す。これぞ真の芸術。
物語的には起承転結の転が凄い。起承までは割とおもしろく愉快な気持ちで観ていられたのに、転で一気に怖くなる。
そこから家族の状況は一気に転がりだす。坂道を下るように下へ下へと。
最終的なトリガーを考える。やっぱり【臭い】だったんだろうな。そこを突かれたのが最も深く刺さっていたんだろうな。気付きたくなかったんだろうな。
コメディっぽい導入から中盤〜終盤はドキドキのサスペンス、そして最終的にはがっつり社会問題を提起している傑作。
改めてポン・ジュノの凄さに感服した。