東川篤哉著、"伊勢佐木町探偵ブルース"。
横浜のとある廃屋の前に桂木圭一は立っている。弟分の黛真琴も一緒だ。彼らは探偵で、近くに逃げ込んだ【アイツ】を捕まえようと躍起になっていて・・・。
そんな2人の探偵バディものだと思っていたら、実は桂木圭一には最近義理の弟ができていて、その義弟が神奈川県警のエリートで、なんだかんだでその義弟と微妙なバディになってしまうという展開になる。もちろん黛真琴ともバディでありながら。
探偵ものでバディもので県警エリートも絡んできてブルースときたもんだ。これは大好物に違いないと意気揚々と読み始めたら、ものの1ページで「これは違う・・・」ってなった。
文体が軽い。めちゃくちゃ軽い。そしてちょいちょい笑わそうとしているあざとさが滲み出ていて好きじゃない。
でもまあ1章くらいは読んでみるかと思って第1章、"過ちの報酬"を読み終えた。
そしたら展開というか事件の解決の仕方はきっちりしていて、ちゃんと探偵もので推理もの、広義のミステリーになっていた。
それもそのはずで、別の著作である"謎解きはディナーのあとで"はベストセラーでテレビドラマにも映画にもなっている(未読で未見)。だから謎解きに関してはハイレベルなのである。
なのに文体が軽く、ゆえにキャラクターがペラい。深みが全くない。
残念な気もするけど、どうやらこの辺が【脱力系】とカテゴライズされている所以ぽく、それはそれで個性になってるみたいなので、私がどうこういうことではないっぽい。尊重すべき案件らしい。
と、そんな"過ちの報酬"を含む4編からなる連作短編集。
読みやすいので読書経験のあまりない人にだっておすすめできる。
けど私は著者の別の作品を読んでみたいとは思わないかなー。
ごきげんよう。