
降旗康男監督、"居酒屋兆治"。原作は山口瞳の同名小説。
子供の声で目覚めた男。野球のアンダーシャツが寝まき代わり。そのまま自身が営む居酒屋の掃除と準備に出掛け、遅れてきた妻と一緒に自転車で市場へ買いものに行く・・・。
カウンターだけの小さな居酒屋。夫婦2人で営んでいる。外には赤提灯。メニューは煮込みとモツ焼き。
毎日常連で賑わうが、広げることは考えていない。日に4万円稼げればいい。
なんだか憧れてしまう居酒屋。これでやっていけるのならこれがいいなって思える。
けれど立ち退きの話もあったりして問題はある。常連で学校の先輩の河原も厄介。常に絡み酒で酒癖が悪い。
それに加えて女性問題。さよという女性(演じるのはその名の通り麗しい大原麗子)にめちゃくちゃ重たい思いを寄せられている。
けれど主人公・英治は何もかもに対して煮え切らない。高倉健、ぶきっちょが過ぎる(セルフパロディにびっくり)。
そんな英治を軸に描かれる居酒屋兆治周りの人間模様。
なんで【兆治】なんだろ?村田兆治?そう言えば劇中の高校生がマサカリ投法だったような?って思ってwikipediaを見たら本当に村田兆治からだった。英治の憧れの投手から店名に拝借したって設定。
昭和58年の作品だから、みんなが飲んでるのがサントリーオールドなのが時代だなって思う。
あと当時のススキノのキャバレーって本当にあんなだったの?ほぼ無法地帯、なんなら無法痴帯じゃないの。行きたかったわー。
キーマンの河原がパンチパーマの伊丹十三なのも驚くけど、その隣りで河原に因縁をつけられるのが細野晴臣なのに更に驚く。しかも市役所勤務で【市役所】って書いたランニング着てるし。どういうこと?
ずっと訛りまくってるちあきなおみもナイスキャラだったな。いつでもお構いなしに陽気で。
でもって英治を支える妻がけなげ。加藤登紀子。『人が思うことは誰にも止められない』って、ちょっと達観してる。いや、諦観か。
ラスト、ずっと煮え切らなかった英治が鏡に映る自分に対して、なんとかエールを送るんだけど、あまり力強くないところがよかった。
過去を背負っているんだけど背負いきれてない感じに人間味があった。
『元気出していこうぜ』
からの高倉健による"時代遅れの酒場"(作詞作曲は加藤登紀子)で終了なのはいい流れ。