クエンティン・タランティーノ監督・脚本、"ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド"。
1969年2月、ハリウッド。かつてはテレビドラマで主演をしていた俳優のリック・ダルトンは、ピークを過ぎて自身のこれからに悲観的。彼のスタントマンでありドライバーであり親友でもあるクリフ・ブースは、トレーラーハウスでブランディというピットブルと暮らす。2人はいつも行動を共にしている。
リックの邸宅の隣りに"ローズマリーの赤ちゃん"が世界的な大ヒットとなった映画監督、ロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してきて・・・。
以前は大好きだったクエンティン・タランティーノ。でも映画館で彼の監督作を観るのはいつぶりだろうか。
開始して20分くらい経って、「あぁ、タランティーノだなー」と改めて思った。
登場人物たちがしゃべってるだけで特に何も起こらない。また、しゃべってる内容がどうでもいいように思える。
これが"ミッション・インポッシブル"なら"007"なら"アベンジャーズ"なら"ワイルド・スピード"なら、もう2つ3つアクションシーンがあって展開も一捻りあるころだぞ。
けれどなんか落ち着いて観てられる感じが、どこかしら懐かしい。タランティーノらしいし、そしてこれも含めて「昔々、ハリウッドで」ってことなのか。
レオナルド・ディカプリオ演じるリックは未来への不安から情緒不安定。泣いたりイラついたり、子役の女の子のプロ意識に恐れ入ったり。かと思えば誉められたらそれなりにいい気分になり。
マカロニ・ウエスタンへと進出するあたり、最初はクリント・イーストウッドがモデルかと思ったけど、そこまでブレイクしてないし名前を変えたってことで
ジュリアーノ・ジェンマの方が近い気がする。
対してブラッド・ピット演じるクリフは常に冷静で自制が効いてる。だから簡単に女の子の誘いにも乗らない。意外に思えたけど、物語の最後までその姿勢は一貫していた。故にこれまで不問にされてきたんだなって納得した。
にしてもブラピ、Tシャツを脱いだ時のボディーが眼福。男の私でも「ヒャーッ!」ってなった。惚れる。
比してレオ、イタリアから帰ってくる時の彼は完全に"
全裸監督"の山田孝之でしょ。髪型、輪郭、ファッション、見た目は完全に村西監督でしょ。ナイスですねぇ!
そんな2人と同じくらい主要なキャラクターがシャロン・テート。2人と同じくらい彼女の物語も描かれつつ映画は進行していく。
そして1969年8月9日を迎える。画面には時刻が表示され、否が応でも緊張感が増していく。
これまで長回しがあったり無駄話があったりと、ゆるーいタランティーノワールドを延々と積み重ねてきた。
その意味がラストにきちんとあった。序破急で言えば、そこまでずーっと序。ラストで破と急が一緒にやってきた。盆と正月くらいの勢いで。てんこ盛り盛りで。
この構成と展開、4人の監督による"フォー・ルームス"の第4話、タランティーノ監督作の"ハリウッドから来た男"に似てる。緩急の構成バランスとアクセルを踏んでからのスピード感。どちらも『ハリウッド』だし。
映像としてはかなりヒドいんだけど(褒めてる)、申し訳ないくらいゲラゲラ笑ってしまった。やっぱおもしろいなー、タランティーノ。
でも!
最後の最後まで気が抜けないぞって思っていた。・・・ら、あら?あ、そう!そういうこと!ってなった。いいね!すっげーいいね!
そうか、こういう映画の作り方があったかーと感心した。タランティーノ、さすが。
賛否両論あるみたいだけど、私は完全に賛の方。お見事。
ごきげんよう。