
武正晴監督、"百円の恋"。
実家で引きこもり中の32歳の一子。1週間前に妹の二三子が息子を連れて出戻ってきて、母が営む弁当屋を手伝っている。そんな妹と折り合いが悪く、ケンカになって家を出ることにする・・・。
主演の安藤サクラがとってもすばらしい。
開始早々の一子、そう、これこそが私がずっと思い描いてきた安藤サクラそのもの。”
ケンタとジュンとカヨちゃんの国”で観た時の強烈なインパクトの安藤サクラそのもの。太っていてブスで表情も暗くて陰気。甥っ子とテレビゲームをしている時の後ろ姿を観ながら、これこれこれ!って興奮した。
だから"
まんぷく"の福ちゃんの方が私にしたら違和感というか、稀有な方の安藤サクラだった。
そんな一子が家を出て1人暮らしを始めてコンビニ的な百円ショップで深夜バイトも始める。近所にボクシングジムがあって、そこで熱心にトレーニングに打ち込む男を見る。
この男ってのが新井浩文で、しっかりボクサー体型になってるところが、さすが役者。(Netflixで今でも観られてよかった)
そんな彼が一子が働く百円ショップに買いものに来て百円落として百円募金してってところからの出会いで物語が動く。
で、ここから勝手にボクサーと一子とのラブストーリーになるもんだと思い込んでいたら、全く別の方向へと物語は舵を切った。
ボクシングを辞めた男はダメ男で、そこにラブはあるようなないようなで、そんなラブの先が見えない一子はひょんなきっかけでボクシングジムに通い出し、思いの外ハマっていく。
多少ハマるくらいだろうとこれまた勝手に思い込んでいたら、ラブを失ってからのボクシングモードがスゴかった。
もう完全にボクサーじゃないの。ガチのトレーニングしてるじゃないの。パンチのキレがハンパないじゃないの。そしていつのまにか体型もボクサーになってるじゃないの。
これどんな順番で撮影してんだろ?ボクサーシーンを先に撮って、数日で太って、後で太ったシーンを撮ったとか?でもそれだと演者の気持ちがうまく乗らないよな。
なんて思っていたら、まさかの撮影期間が2週間。最初の3日で太ってるシーンを撮って、残りの10日で体を絞っていきつつボクサーシーンの撮影をしたんだそう。何それ?すっげー!(
こちらのインタビュー記事より)
そりゃーそこまでしたら、最後の試合のシーンであんなにグッとくるのも納得だわ。めちゃくちゃカッコよかったもの、左ボディからの左フック。
私が通ってるジムのトレーナーが前に『左ボディからの左フック、左からの左はカッコいいですからね!』って言ってたのを思い出した。確かにカッコいい!
そして試合後、ちゃんと相手と肩を抱き合ったところでホロホロと涙が。
一子のジムの会長が『ボクシングを自己満足の道具にするな』って言ってたけど、この一子のボクサーとしてだけじゃなくて人としても成長した姿を見れば、自己満足の道具でもいいじゃんって思った。それが必要な人はいるんだよ。
そんな会長もあの試合が嫌いじゃないって言ってたから、あれは一子を認めたってことなんだろう。
こんなの観たらボクシングへのモチベーションが更に高まるな。がんばろ。
(なんて書いた次の日に、張り切って一子ばりの縄跳びをしたら見事に右ふくらはぎ肉離れをしたのが1週間前のこと。てへ。)
ごきげんよう。