若竹七海著、"悪いうさぎ"。
葉村晶、女性、31歳は長谷川探偵調査所と契約しているフリーの調査員。長谷川探偵調査所の所長を経由して、東都総合リサーチからのご指名が来た。17歳の女子高生を男の家から連れ戻して欲しいという依頼だ。すぐに身支度をして出かける・・・と、ここから彼女にとって最悪の9日間が始まるのだった・・・。
前哨戦というタイトルの20数ページのプロローグから怒涛の展開。葉村晶、本当に不運の人。
そして始まる本編。序盤戦、前半戦、中盤戦と物語は積み重ねられるも、いったいどこへ向かっているかが分からない。
すると中盤戦のラストで物語は思わぬ方向へ舵を切る。葉村晶、本当に本当に不運の人。
そして後半戦、終盤戦と物語は予期せぬ方向へ、そして向かって欲しくない方向へと進んで行く。
こんなに先が読めない小説も久しぶり。そしてこんなに人の悪意に満ちた小説も久しぶり。
今作にはいろんな悪意があるが、中でも女性の友情に潜む悪意が醜悪で秀逸。その章の最後の一文がまたすばらしい。割れたコップの情景と自分たちの壊れた友情の状況がきれいに重なっている。美しく、悲しく、そして痛々しい。
その直後に出てくる企業コンサルタント及び経営アドバイザーに対するディスり方が、おそらく著者の気持ちを代弁させたものと想像できて、それはそれで別種の悪意を感じる。けれど私としては同意。なんなら気持ちよかった。
物語の本筋は、かなり辛い展開を見せる。
それでも読み進めてしまうのは文体と葉村晶のキャラクターのせい。やっぱりどちらも好みだ。
次作は"さよならの手口"。また悪意に満ちているのかしら。
それでも楽しみ。
ごきげんよう。