柚月裕子著、"検事の本懐"。
米崎県警本部の大会議室、米崎東警察署署長の南場輝久は胃が痛い。この県下署長会議において、未解決の連続放火事件のことで吊るし上げを食らうのが目に見えているからだ。連続放火事件は先月で17件目を数えた・・・。
で始まる"樹を見る"を含む5話からなる連作短編集。
作品としての順番的には
"最後の証人"の次が今作で、今作の次が"
検事の死命"。時系列的には今作、"検事の死命"、長らく空いての"最後の証人"。
どっちにしても読む順番を間違ってしまった。"検事の死命"よりは今作を先に読んでおくべきだった。最後に収録されている"本懐を知る"を読みながら切にそう思った。けど覆水は盆に返らず。仕方ない。
この佐方貞人シリーズ、主題が非常に明確。
まず『罪はまっとうに裁かれなければならない』ということ。
検事の心得として『法よりも人を見ろ』ということ。
そして今作の文章から引用すると『過ちは誰にでもある。大切なのは、過ちを犯したあとだ』ということ。
この3つのメッセージが3作の中で繰り返し出てくる。主人公・佐方貞人の信念であり、同時に著者・柚月裕子の信念でもあるんだろう。
異論の余地のない正論で真実だと思う。特に3番目は。
ここまで3作読んで確信した。ていうか最初に読んだ時の印象から変わらないんだけど。
私は佐方貞人というキャラクター、そしてこの文体も物語もものすごく好き。柚月裕子作品の中で一番好き。
なので4月に出た4作目、"検事の信義"が非常に楽しみ。文庫化を待たずに単行本を買っちゃおうかなって思ってる。
ごきげんよう。