柚月裕子著、"朽ちないサクラ"。
米崎県警広報広聴課の森口泉を始めとする課員全員は、朝から鳴りっぱなしの電話への対応に追われている。今朝の地元の新聞に先日の女子大生ストーカー殺人事件への対応の不備を指摘する記事が載ったためで・・・。
主人公である森口泉は警察署に勤めているが警察官ではない。事務を担当する警察職員だ。
そんな一職員が諸々あって自ら捜査に乗り出す導入部がとてもおもしろい。起承転結の起から承あたり。グイグイ引き込まれて、物語の先が見えずに一気に読み進めた。珍しく家に持って帰ってまで読んでた。
んだけど転のあたりで失速。急にカルト教団が出てきたところ。あそこで「は?」ってなった。
それまでも展開にちょっと都合が良すぎるところや捜査の読みがあまりにも浅いところがあったけど、そこはまあ良しと思っていた。
でもあの急なカルト教団の出現の仕方はちょっと。それまでその存在が微塵もアナウンスされていなかったので唐突が過ぎる。
し、そうなると物語の根幹から違うものになってくる気がする。
なんて思いつつ読み進めたら、ほーらやっぱり。
森口泉と相棒(?)磯川の素人ハードボイルドチックな展開がおもしろかったのに、そこからがっつり公安ものっぽくなっていく。カルト教団つったら公安案件だもの。
当然、彼女らの活躍の場はない。残念ながら。
けれどまあ結ではしっかり主人公に返り咲くんだけれども。森口泉、よくやった!ってなるんだけれども。
んだけどこちとら結構な数の公安ものの小説を読んでるもんで、言うても察しはついてたよね。これで真の解決のわけがないし、だったらって考えたら自ずと答えは出てくるし。
ああ、いつからこんな穿った読み方をする読み手になってしまったんだろう。もうちょっと素直に純粋に楽しめる読者でありたいのに。
などと思ってしまう今日この頃。
ごきげんよう。