
ウィリアム・フリードキン監督、"恐怖の報酬【オリジナル完全版】"。原題は"SORCERER"。
メキシコの殺し屋、フランスの銀行家、イスラエルのテロリスト、アメリカのマフィア。4人の男たちは南米奥地の村に流れ着く。
その地の油井が火災に見舞われ、鎮火のためにニトログリセリンが必要となる。わずかな振動で爆発する危険があるニトログリセリンだが、車で運ぶしか手立てがなく、志願者には多額の報酬が与えられることになり・・・。
元々のオリジナルはアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による1953年のフランス映画、"恐怖の報酬"。
それをウィリアム・フリードキン監督が4人の男たちの設定を大幅に変え、スリルあふれるシーンを追加し、1977年にリメイクした。
しかし当時、興行的な失敗から北米以外では約30分カットされたバージョンしか公開されなかった。もちろん日本でも。
それを今回、ウィリアム・フリードキン監督の納得のいく形に再構築したのが、この【オリジナル完全版】。
だもんで映画館には映画が大好きなんだろうと思しき年配男性客しかいなかった。女性客はワイフともう1人だけ。ちなみにワイフは私が観に行くって言わなかったら絶対に観てないと言ってた。
昔、レンタルビデオで観たはずなんだけど、あれはアンリ=ジョルジュ・クルーゾー版だった気がする。
だってこの【オリジナル完全版】は冒頭から観たことないシーンの連続だったもの。
ていうか最初は訳が分からない。場所は変わるし登場人物は変わるしで、はてさてって感じだ。
それが場所が南米に移ったことで「ははーん」てなる。そこに流れ着くに至った彼らの理由を描いていたのだと理解する。なるほど、バックボーンって大切。
そして始まる恐怖のドライブ。
これがもう緊張感ありまくりのスリル&サスペンス満載ドライブ。私だったらこの仕事、絶対に受けない。
中でも上の写真のボロボロの橋のシーンは秀逸も秀逸。小さく声が出たし、観ていてずっと力が入っていた。
CGなんてない時代だから、ちゃんと車をあの橋に乗っけて撮ったんでしょ。あんな暴風雨の中で。凄過ぎるでしょ。当然すんごい揺れるの。冗談みたいに。ヤバいわー。映像の力がハンパない。
その他にもあれやこれやの問題勃発でずっとスリル&サスペンスでショッキング。
70年代の映画だけあってアメリカン・ニューシネマな雰囲気もあり、男臭さがむんむんで、しかもバッドエンド。
1977年公開版ではあのラストがカットされてたっていうから本当に酷い話だ。
観終わってもハッピーな気持ちにはならないし、観てる間も緊張しっぱなしで辛い。
台詞も少なく、ゆえに説明も少ない。
でもだからこそ映画の力強さ、映像の訴求力の凄まじさを感じられたのが良かった。
CGとか物量とかスケールではなく、撮るべき場所で撮るべき画を撮るためにお金をかけた、最近の映画にはないタイプの大作だなと思った。