
NHK"未解決事件"、実録ドラマ"警察庁長官狙撃事件"。
ドキュメンタリーと実録ドラマの2本立てからなる"未解決事件"だけど、BSであった実録ドラマのディレクターズカット版のみを鑑賞。
1995年3月20日、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こる。世間がまだ緊張感に満ちていた僅か10日後、時の警察庁長官が狙撃されて重傷を負う。公安が指揮を執り、オウムによる犯行だとして捜査を開始する・・・。
中村泰なる人物の独白でドラマは始まる。彼は何者なのか?が物語の主軸であり、それがとてもミステリアスに描かれている。
50年近く前に拳銃で警察官を射殺。無期懲役をくらって19年服役。出所後の足取りは不明。そして30年近く経った現在、名古屋と大阪で現金輸送車を拳銃で襲撃して強盗の罪で逮捕、収監されている。
その中村泰が警察庁長官狙撃事件の実行犯であるような口ぶりで話し始める。
このシーン、イッセー尾形演じる中村泰と國村隼演じる原刑事が相対するシーンが秀逸。名優2人による緊張感に満ちたやり取りにゾクゾクする。
徐々に真に迫った話をしだす中村。しかし最終的な自白には及ばない。物証もない。とはいえ状況証拠は完璧だ。普通なら逮捕を強行してもおかしくない。
それが逮捕されないのだ。なぜか?それは最初に公安がオウムの犯行であるという見立てをしたため。警察がその見立てを覆すには完璧な証拠がなければならない。公安の面子を簡単に潰すわけにはいかないからだ。
なんだそりゃ?そんなことで犯罪者が逮捕されないのか?真実は隠蔽されるのか?
途中まではずっと原刑事と同じく、中村が真犯人だと信じていた。けれど時効間際の最後の最後になっても彼は自白しない。
どうしたんだ?自身の犯行だと世に知らしめたいんじゃないのか?革命家として成し得たことを自慢したいんじゃないのか?なぜ自白しない?協力者の名を言わない?
原刑事も観ているこっちも、さすがに疑念が湧いてきた。実は彼は大事件を引き起こしたと吹聴したいだけの嘘つきなのでは?と。
そして事態は進展せぬまま公訴時効を迎えた。にもかかわらず、警察はオウムによるテロと認めるとの会見を行った。面子を保つために。前代未聞である。
私が観たのは10月29日放送のディレクターズカット版。
この番組の初回放送は9月にあった。その内容は書簡で収監中の中村泰に伝え、その上でNHKとして彼に問うた。『あなたが國松長官を狙撃したのか?』と。
今回の放送の数日前に彼から返信が届いた。しかしながらその内容は今まで通りの的を射ないものだった。
中村泰は真犯人なのか?真実は明らかにされないまま、彼は88歳の今も収監中の身である。
(今週土曜深夜にドキュメンタリー、来週土曜深夜に実録ドラマが再放送。)