
帚木蓬生著、"閉鎖病棟"。
まだ若い島崎由紀は産婦人科で理不尽な思いをしている。梶木秀丸の父親は戦争から帰って来たが、家族の厄介者に成り下がってしまった。昭八は甥の敬吾と仲が良いが、最近疎まれるようになってきた。朝5時半、ドウさんの勤行で病棟の一日が始まる・・・。
冒頭から読み進めていくと、はてさてこれは何がどうなってどんな構成になっているのやら?と考えてしまった。
けれど臆せずそのまま読み進めていけば理解できた。これは精神科病棟を舞台にした群像劇で、先に出てきた人物たちは今はその中の患者たちで、それらの過去を描いていたのだと。
しかしながら彼ら彼女ら以外の登場人物も多く、その全ての過去が詳細に描かれているわけではないので、正直、登場人物の把握が難しい。名前もカタカナ表記が多いし。
なので主要な登場人物数人だけの物語としてしか理解できなかった。
著者は精神科医で、だからこその精神科病棟を舞台にした物語。ゆえにどこかしら患者たちへの目線が優しい。
私にとっては裏表紙に書いてあるような『感涙を誘う結末』ではなかったが、それでもチュウさんと秀丸さんと島崎さんに幸あれと願った。
ごきげんよう。