
矢月秀作著、"警視庁公安0課 カミカゼ"。
友岡基裕は千鳥ヶ淵のベンチに座っている。そこにやってきたのは藪野学。2人とも警視庁公安0課に所属する警察官で、今は同じ案件を別々のルートで内偵している。情報交換が目的だが、お互いに情報の共有には慎重にならざるを得ない。相手に誤情報を与えて身に危険が及ぶようなことは避けねばならないし、または相手が敵に寝返っている可能性もある。もしそうならこちらの情報は的に筒抜けになってしまう。自分以外誰も信用できない公安警察官が探り合いながら情報交換をして・・・。
全5章からなる物語。各章ごとにテイストが違っておもしろい。
全編を通して公安の潜入ハードボイルドなんだと思い込んで読んでいたから1章の最後で「えっ!」ってなった。
そして始まった2章から3章の流れ。公安のこんな部分、こんな描き方を読んだのは初めてだ。実際のところがどうなのかは知らないが、実に興味深いし、謎に包まれた公安だからこそフィクションとして成立させやすいってのは道理だ。
からの4章5章で満を持しての潜入ハードボイルド。こうなると2章3章がいわゆるエピソードゼロ的な意味合いを持ち、いろいろ知ってるだけに主人公への感情移入がハンパない。この構成はかなり巧み。
裏表紙の惹句にあるような『ハードアクション』かどうかは微妙だけど、物語への引き込み方と文章のリズムは、最近読んだこの手の小説の中じゃ圧倒的に好み(もちろん"新宿鮫"を除く)。
続編が最近文庫化されたみたいだから読まきゃ!・・・って思ってたら
棚からぼた餅。
ごきげんよう。