
月村了衛著、"ガンルージュ"。
水上第二中学校の体育館では緊急保護者会が行われており、教師の渋矢美晴は生徒への暴力問題でPTAから槍玉に揚げられている。しかし美晴としてはカツアゲをしようとしていた生徒にドロップキックを食らわせただけであって、何の落ち度もないと思っている。が、立場的に仕方なく謝ることに。美晴への怒号が飛び交うその場で、一人涼しい顔をしている女性がいた。秋来祐太朗の母、秋来律子だった・・・。
ただの教師と主婦だと思って読み進めていったら、なかなかのトンデモ展開。
主婦であるはずの秋来律子は、実は特殊訓練を受けた元警察官で諸々の能力がスゴい。そして渋矢美晴は体育教師なので基本的に身体能力が高く、しかも刑事と付き合っていた過去があり、その元カレ刑事に護身術を習っていたものだから、こちらも諸々の能力がスゴい。
そんな2人がひょんなことから協力して韓国の凄腕特殊部隊を追い詰めていくという、なんじゃそりゃ!な物語。
馬鹿馬鹿しかったり、流石にそれはと感じたり、ラッキーが過ぎたり、いろいろと突っ込みどころ満載なんだけど、なぜか読んでて嫌な気分にならない。むしろずっとおもしろく読んでいた。最後なんて読み終わるのがもったいないくらいに思っていた。
おそらく2人のキャラクターのせい。知識と技術に加えて執念を持っている律子と、楽天的で度胸がよくて幸運の女神的な美晴のバランスがとてもいい。この2人が出てくる続編なら絶対に読みたい。どんな設定なら続編ができるんだよって思うけど。
にしても、だ。
美晴の元カレ刑事の設定が興味深い。
美晴は元ロックバンドのボーカル。そしてその元カレ刑事は新宿署生活安全課の刑事。
ここで「おや?」ってなる。当然なる。
さらに。
その元カレ刑事は元公安のワケありキャリア。
おいおいおい!もう「おや?」どころではない。これはだって、もう絶対に。
そしたらこうきた。
その元カレ刑事は自殺した同僚からある文書を託されていて、その文書には警察の根幹を揺るがしかねない秘密が記されていた。
もう完璧にそう!確実にそう!しかも美晴の胸は大きいときた!ビンゴー!!!
元カレ刑事、鮫島じゃん。"新宿鮫"の鮫島じゃん。まんま鮫島じゃん。んで美晴は晶じゃん。ロケットおっぱいじゃん。マッド・アリスじゃなくてフーズ・ハニィじゃん。
この設定が出てくる度にニヤニヤしてた。新宿鮫リスペクト、大沢在昌リスペクトってことなんだろうな。こういうのおもしろいな。
と、おもしろく読んだんだけど、タイトルの"ガンルージュ"の意味は読み終わってもピンとこず。
ガンはいいけどルージュはなんだ?女だからってこと?うむー。
タイトルがそんなだから装丁も更にピンとこず。
私が担当編集者ならタイトル変更を促したな。"水上鮫"とか"鮫の女"とか"新宿鮫 律子美晴"とか。・・・没だな。