
安藤能明著、"夜の署長"。
夕暮れの新宿歌舞伎町、新宿署刑事課所属の野上と筒見は連れ去りを目撃する。現場は制服警官に任せ、2人は現状報告のために署に戻る。緊急配備が行われたりと慌しい中、日本最大のマンモス署である新宿署に10年も勤続している下妻晃が姿を現わす。その実務経験の豊富さと存在感から下妻は"夜の署長"と呼ばれている・・・。
夜の新宿を舞台にした4編の連作集。主人公は東大出のキャリアである野上。そのパートナーがSATあがりの筒見で、彼らに付かず離れずの距離からアドバイスをするのが【夜の署長】こと下妻。
新宿を舞台にした警察小説ということで、どうしても大沢在昌の"新宿鮫"を思い浮かべてしまうけど全く毛色が違う。
"新宿鮫"は主人公の鮫島がとことん駆けずり回るハードボイルド小説。対して今作は【夜の署長】と呼ばれる下妻が直感的に事件の裏までも見通し、その全容を野上や筒見を使って解明していく、言わばチームによる警察小説。
なんだけど下妻の見通す力が凄すぎて、印象としてはワンマンな警察小説。だからこそタイトルが"夜の署長"なんだろうけど。
それにしてもちょっと読者を置いてけぼりにしてるような気がする。そこまで分かる?そこまで見通せちゃう?下妻あんまりじゃね?みたいな。
ロジックがしっかりしてるから謎解きの説得力はあるんだけど、逆にロジックがしっかりしすぎていて小説として不自然というか窮屈な印相を受ける。キャラクターはおもしろいんだけどなー。っていうのが正直なところ。
でもこの著者、警察小説の新たな旗手らしく、いくつかの作品がシリーズ化しているらしい。んー、もう1冊くらい読んでみようかな。迷うところだな。