日曜日の桃月庵白酒独演会。
私たち夫婦の間ではもう安心と安定の桃月庵白酒。今日もおもしろいんでしょーって当然の期待を抱えて行ける。
まずは枕。最近は鹿児島での仕事が増えたって話の『5月、いや6月は母校の同窓会で』ってところで「
7月ですよ!」って言いたくなった。
最初の噺は"茗荷宿"。
泊まり客の飛脚に茗荷料理ばかり食べさせる宿の噺。やっぱり食べる仕草がいいなあ、白酒師匠。
なんて思いながらも
直前にビールを飲んでいた私。そのせいと白酒師匠の美声と素敵なリズムで茗荷を食べていないのに頭がボーッと。要はちょっとした睡魔が。
でも乗り切ってちゃんと最後まで聴けた。
次は"厩火事"。
途中で「この噺知ってる!聴いたことある!」って思って、同時にさげも思い出した。
だけど奥さんの『おまえさん、唐(もろこし)だよ〜!』が意外とあっさりしていて、前に聴いたのはもうちょっと情感たっぷりだったような・・・と思った。
そして旦那の最後の決め台詞。あれが実は照れ隠しの言い草でもあるはずなんだけど、この感じだとちょっとそうは思えないかな・・・と。
こんなに不満だなんて私は前に誰の"厩火事"を聴いたんだろうと思ったら、生じゃなくてCDで聴いたんだった。名人・
古今亭志ん生の"厩火事"を。これはさすがに分が悪い。
また志ん生のをCDで聴いてみよう。
仲入り。
最後の噺は"青菜"。植木屋がご隠居の真似をしてもてなそうとする滑稽噺。
白酒師匠のお酒を飲む噺にはずれなし。途中からゲラゲラ笑えて最高だった。
植木屋が旦那の真似をしようとして『精が出ますな』ってところから始めた瞬間、私も隣りのワイフも同時に小声で「そっから?」って言ってた。そこからどんどんおもしろくなっていった。
植木屋さんはばかばかしいけどなんだか愛らしいし、友だちの突っ込みは正確だし、しかも奥さんが押入れに入ったままだってことを思い出したらもうおかしくておかしくて。フリとオチがしっかりしている上に、お酒や鰯の伏線をちゃんと回収するという筋としても見事な噺。
さげまで尻上がりにおもしろくなっていって最後の一言でストンと落ちた。おもしろかった。途中、これずっと聴いていたいな、ずっと聴いていられるなと思った。最高。
ご隠居が奥さんを呼ぶ時に手を2回たたいて『奥や!奥や!』って呼んでて、もちろん植木屋も真似してたんだけど、この会場にはなんと
料理処 おく屋の大将が観に来ていて、帰りに見付けたのですかさず彼の目の前で手を2回たたいて「おく屋!おく屋!」って呼んであげた。『だからよー!』って言って嬉しそうだった。
ということはもしや、あの日のおく屋のメニューには急遽、茗荷尽くしと鯉の洗いが追加されたんじゃなかろうか。そしてメニューに【青菜のおひたし】って書きながらも実は用意していなくて、うっかり注文されたら『その名を九郎判官』って返していたんじゃなかろうか。しかも給仕の人が高いお皿を持ったまま転んだりして、大将が『怪我はないか?』って声をかけたりしたんじゃなかろうか。そしたら給仕の人が『大将、唐だよ〜!』って答えて、もう!最高!
と、私の脳内おく屋は落語尽くし。
こんなことを考えてしまうのも独り話芸ゆえに想像力を刺激する落語だからこそ。
次は誰の噺を聴きに行こうかしら。
ごきげんよう。