
米澤穂信著、"満願"。
昭和六十一年三月、中野に自分の弁護士事務所を構えて十年になる藤井は一本の電話を受ける。待ち詫びていた鵜川妙子からの電話、八年の刑期を終えて出所したとの知らせだった。弁護士として独り立ちして初めての殺人事件の裁判で、三年がかりで控訴審まで進んだが、被告人・鵜川妙子の希望で控訴を取り下げたため、懲役八年の一審判決が確定した。藤井は当の事件のファイルに目をやる・・・。
という表題作を含む全六篇の短編小説集。それぞれのタイトルは"夜景"、"死人宿"、"柘榴"、"万灯"、"関守"、"満願"。
山本周五郎賞受賞作であり、「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」の三つで初めての全て一位を獲得した驚異の一冊、驚異のミステリー小説集。
そうは言っても・・・と、ちょっと意地悪な心持ちで読み始めたのだが、読み進めれば読み進めるほどに初の三冠は伊達じゃないなと確信していった。
精緻な文体、惹きつけるストーリーテリング、最後にくるっとひっくり返される世界。確かに極上のミステリーだ。
しかもどれも時代設定が微妙に古くて昭和の匂いを纏っている。携帯とかカーナビがまだ一般には普及していない時代。だからこそ物語を作りやすいのだろう。
六つの物語は全く関連性はないが、どれも暗く重く、爽快感など皆無。以前読んだ"
儚い羊たちの祝宴"と地続きの世界観。人間が持つ暗部をじんわりと照らし出す。
読み終えて得られるのは、とても陰鬱な極上のカタルシスだ。