大森立嗣監督、"さよなら渓谷"。原作は吉田修一。
都会から離れた緑が深い町のアパートに住む夫婦。アパートの周囲は数日前から取材のための人でごった返している。隣りの子供が殺された事件の取材だ。そして今日、子供の母親が逮捕された・・・。
吉田修一と大森立嗣の相性はとてもいいと思う。
おとなしく内省的で静かな川面のような物語と映像は明らかにシンクロしている。そしてそこに不意に立ち上がる火のような真実の熱量の加減。狂いそうで狂わない、叫びそうで叫ばない、どこかで理性のリミッターが働いている。ギリギリで向こう側へ行かない、行けない、行ききらないバランスが両者の表現には共通している。
人はなんのために生きるのか。
この大きな命題に明確な答えを出す必要なんてない。生きていく上で大事を成さなくてもいい。ただ、ただせめて幸せになるために生きたい。どうせ生きているのなら、今より幸せな方へ向かいたい。じゃなきゃ生き続ける意味なんてない。
幸せにならないように生きる。その生き方はとても悲しくて虚しい。
どんな人であれ、今よりも幸せな方へ歩んで行けますように。そしてそれが許されますように。
ごきげんよう。