
茂出木心護著、"洋食や"。
泰明軒本店に奉公し、昭和六年に洋食や【たいめいけん】を独立開業した著者の洋食にまつわるよもやま話。
たいめいけんは今でもテレビで紹介される人気店。一度は行ってみたい。コールスローとボルシチをつまみにビールを飲んでオムライスでしめたい。
そんなたいめいけんの創業者の食にまつわるエッセイ集なんだけど、これが昔の人だからなのか、文章が粋。だいたい最後はそれまでを受けての洒落の利いた一文で終わっている。なんとも小憎らしい。
そんな最後の一文ではなくて、私の好きなところを抜き書き。
コーヒー通と称する方がいて、(中略)他人様に通と言われれば言われるほどお気の毒と思います。
コーヒーの出るたび試験(ため)していては、ほんとうにコーヒーを味わってのむ楽しさを知らないのじゃないかしら。
これはコーヒーだけじゃなくてあらゆるものごとに当てはまる。作る側に立つ時は別だけど、消費する側なら単純に「おいしい」とか「うまい」とか「おもしろい」でいいじゃないかっていつも思う。(とか言いながら映画や本にごちゃごちゃ言ってる私なわけで。)
そして私的には、あーだこーだ言う人はそんなことが言いたいだけでちゃんと分かってるのかどうかは怪しいと睨んでる。(こんな私を含めて。)
もう一つ、『男のわがままととるかどうかは別として、世の奥様方に料理人として申しあげ』たここがとても好き。
心のこもった料理はどんなにいい飲食店でも作れません。永年つれそった奥様以外にはできません。ひとは料理といっしょに愛情というか、まごころを食べるものです。(中略)そして、若い方には、しっかりした基本を今のうちに身につけて頂きたいとお願いします。愛情だけでは料理はできませんし、技術だけでは料理は生きてこないものなのです。
プロフェッショナルである料理人が世の奥様の料理に完全に白旗をあげている。愛情と技術の両方が大事だけど、愛情は技術に勝る。
我が家のランチブログが好評な理由はその辺かもしれない。つって。
ごきげんよう。