
クリント・イーストウッド監督、"アメリカン・スナイパー"。
米国軍史上最多の160人を狙撃したスナイパー、クリス・カイルの物語。実話を元にしている。
予告編がかなり緊迫したもので、あれを観ただけで映画として傑作だということは確信できた。事実の是非はどうであれ、だ。
オープニング、まだ映像が始まる前の音がもうすでに不穏で緊張感に満ちていて、今から始まる本編のプレリュードとしては数秒で完璧だった。
戦争に行って帰ってきた人の苦悩をテーマにした映画はたくさんあるけど、今作はその先へと踏み込んでいる。
カイルに多くの映画の主人公が陥ったような苦悩は感じられない。彼は愛国者であり、自分のしたことは仲間を守るためにすべきことをしたまでと信じているからだ。
ただし、それでも、戦争は人の心を壊す。
当事者であるカイルではなく、家で彼を待つことしかできない妻の言葉が実に重い。
『戦争で影響を受けなかった人なんていない。』
カイルは帰国しても放心することが多く、まるで心を戦場に置き去りにして体だけが戻ってきたかのよう。そんな彼と共にいる妻の哀しさや寂しさが、カイルの心の疲弊を照射する。
大げさでもなんでもない、戦争というものがもたらすただただ不幸なリアルがあった。
僕は戦争に行きたくない。身近な誰も行かせたくない。
わがままだと言われてもいい。利己的だと言われてもいい。非国民だと言われてもいい。
誰も戦争に行かせたくない。
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アメリカン・スナイパー" ★★★★☆