クリント・イーストウッド監督、"ジャージー・ボーイズ"。
1950年代のニュージャージー。盗みで生計を立てつつ、音楽で有名になって街を出て行こうという野心を持つトミーは、独特の声を持つフランキーと出会う・・・。
フォー・シーズンズって名前は知らなかったけど、"Sherry"とか"Can't Take My Eyes Off You"って曲はもちろん知ってる。そんな誰でも耳にしたことある名曲を生み出した4人組の物語。
栄光と挫折、光と影って言葉がすぐに思い浮かぶ。売れるためにはキレイごとばかりじゃダメだし、周りにいるのがいいヤツばかりなわけもない。友情、嫉妬、裏切り、軋轢。音楽的な成功って圧倒的にいいことのはずなのに、人生プラマイゼロどころか確実にマイナスだろうって思うくらい悪いことだらけだ。
イーストウッド監督の"ミスティック・リバー"は好みじゃなかった。"ミリオンダラー・ベイビー"も後味が悪くてどんよりした。偽悪的と言ってもいいくらいネガティブな物語が、いい話好きな僕にとっては不快だった。
けれど、"チェンジリング"で観方が変わった。ネガティブな状況の中でこそ輝く物語があるってことにに気が付いた。だからそれ以降の作品は大好きだ。
本作も同じ。悪いことだらけの状況だからこそ、歌が、ただひとつ純粋な【歌】がキラリと輝くんだ。
そんなすばらしい本作なのであるが、観に行く寸前の私にワイフがこう言った。
『田村正和が出てるんだって。』
何をバカな。出てるわけがないだろう。
と思ったのだが、観始めてしばらくたったら、いた。田村正和がスクリーンの中に、いた。ファルセットボイスで声高らかに歌って、いた。
もしワイフの戯れ言に耳を貸していなかったらそうは見えなかったかもしれない。しかしもう手遅れだった。私の目には完全に田村正和として映っていた。しかも後半、向こうからさらに似せてきていたし。
私的評価が満点の★★★★★ではなく★★★★☆なのは、そのせいだと言えなくもない。
ごきげんよう。
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ジャージー・ボーイズ" ★★★★☆