以前”ローレライ”はスクリーンで観た。原作者の福井晴敏が自ら脚本を書き、思いを一にする監督とがっちり肩を組んで映画化した作品だ。いわば、原作者側からの強いアプローチによる映画だ。
原作の小説”終戦のローレライ”がとてもおもしろかったのと、原作者のこの映画に対する思い入れの強さに惹かれて映画館に足を運んだ。
正直、イマイチだった。両者の思い入れが空回りしていて、ドラマの部分が弱かった。小説と映画は違うというのはわかっていても比べてしまうし、明らかに小説の方が面白かった。
今回は”亡国のイージス”をDVDで観た。同じ原作者の小説を映画化したものだ。しかし原作者は映画にはノータッチであり、監督はベテラン阪本順治。完全に映画製作者側からのアプローチによる映画だ。
これは面白かった。登場人物は少なくないし、その関係も複雑だ。設定もややこしい。けれど脚本がよくできているのだろう、過不足ない情報量で、すんなりとストーリーに集中できた。
映画としての緊張感もあり、キャラクターも魅力的だ。
”如月 行(きさらぎ こう)”役の役者はまさにはまり役で、芯の強さともろさを内包した感じが小説に出てきた如月 行その人だった。
小説と映画は別モノだからこそ、思い入れだけでその差は縮まらない。映画としての文法やノウハウ、スキルが必要なんだと思った。
亡国のイージス
福井 晴敏 / 講談社
スコア選択: ★★★★★
終戦のローレライ〈1〉
福井 晴敏 / 講談社
スコア選択: ★★★★★
亡国のイージス
/ ジェネオン エンタテインメント
スコア選択: ★★★★