山下敦弘監督、"苦役列車"。原作は西村賢太の芥川賞受賞作。
幼い頃に父親の性犯罪によって一家離散に陥ってしまった北町貫多は、中学を卒業してからずっと日雇い人足で日銭を稼ぎながら日々悶々と暮らしている。ある日、同い年の19歳の専門学校生が日雇いの仕事にやって来て・・・。
以前、西村賢太の"
どうで死ぬ身の一踊り"を読んでいたのでテイストは分かっていた。彼の小説のスタイルは、主人公がほぼ著者に等しい私小説であり、話は完全に創造された物語ではない。つまりこの嫉妬心が強く向上心もなくいろんなことから逃げ続けるダメな主人公・北町貫多は西村賢太その人であり、ここで起こったあれやこれやはほぼ実際に彼の身に起こったことなのである。
森山未來、昨年の"
夫婦善哉"同様、またしてもダメ男である。また今回も森山未來をちょっと嫌いになってしまった。役で演技だとは分かっていてもちょっと嫌いになってしまった。
私の中では完全に「森山未來=ダメ男」という図式が出来上がっている。「山田孝之=怖い男(勇者ヨシヒコを除く)」と同様に。
ヒロイン康子を演じる前田敦子、今までなんの興味も抱かなかったが、この昭和の世界の中ではなんだかかわいい。服が野暮ったかったりするのも逆にいい。海に飛び込んで行くシーンなんて最高だ。シミーズ?シュミーズ?姿、最高だ。高良健吾演じるイケメン専門学校生・正二が『透けてる!透けてる!』って興奮するのも当然。私も観ながら「おい、カメラ!もっと寄れ!康子に、康子にもっと寄れ!寄れよ!」と念じたもの。
西村賢太が"苦役列車"で芥川賞を受賞した時に私が書いたブログが
コチラ。
この時に私が書いた『(前略)西村賢太が、あのキャラクターを買われてテレビに出まくって戦場カメラマンみたいになる日が来るかもしれない。・・・いや、何言うか分からないから今のテレビじゃ無理か。うん、そりゃないな。』ってのに反して、彼をテレビでちょこちょこ観る。クイズ番組の解答者だったりトーク番組のゲストだったりする。
人間万事塞翁が馬である。