僕は25歳の時にショットバーに入店した。6月半ばだった。マスターと先輩が1人いた。
1ヶ月くらい経った時に急に先輩が辞めて、マスターと2人になった。2人でがんばろうってなった。と言っても僕はなんにもできなかった。バーテンダー経験なしで入店したド素人のペーペーだったからだ。
さらに1ヶ月くらい経った。マスターが交通事故に遭った。全治3ヶ月。マスターは英断と言うか暴挙と言うか、入店して2ヶ月そこそこのド素人でペーペーの僕に店を開けさせた。もちろん独りぼっちで。カクテルは簡単なものだけ。シェーカーは振らない。ミキシンググラスももちろん使わない。売り物はバックバーにどっさりあるウイスキーだった。
マスターは全治3ヶ月を無理矢理繰り上げて2ヶ月で退院した。その間、丸々2ヶ月、独りぼっち営業をやり通した。あの時の僕は確実にお客様に助けられた。そんな時でも通ってくれるお客様がいらしたからこそ、2ヶ月間やり通せた。
昨日からぴらもーるの洋風居食屋さんを、マスターが入院のため、バイトの女の子が1人で開けている。
彼女は『こんな何もできない自分がこの店を独りぼっちで営業できるのか!?』って思ってるんだろうな。と、勝手にあの時の自分と重ねてしまう。
だから、最近はめっきり寄り道が少なくなっていたけど、ちょっと寄り道を増やそう。ピンポイントで。帰り道だし。
あの時の自分に会いに行ってるような気がするんだよな。勝手にそう思われる彼女は迷惑かもしれないけど。
と、いい言い訳を見つけた霜月初日。昨日に引き続き今日も寄るか?
ごきげんよう。