吉田大八監督・脚本、”腑抜けども、悲しみの愛を見せろ”。
ある田舎町、老夫婦が交通事故で死んでしまう。葬式に出席しようと東京から長女が帰って来た。スタイル抜群で自称女優のこの長女の帰郷が静かな暮らしに波乱を呼び込む・・・。
田舎暮らしに嫌気がさし、都会に憧れ、夢を持って旅立ったはずの長女。しかしながら女優としては鳴かず飛ばず。まあなんと言うか、どこにでもいくらでもいるステレオタイプの夢破れし者。ただ彼女は人並み以上に自信家で、あまりにも周りが見えなさ過ぎた。そこが個性と言えば個性。哀しき個性だ。
物語としての情報が時間を遡って小出しにされるので、1コ解決したらまた1コの疑問が生まれ、常にジリジリヒリヒリとした緊張を強いられる。爆発のための火種はそこかしこにあり、後は導火線にそれが燃え移るかどうかってだけ。ずーっと、不穏な空気が漂っている。
長男が何度も繰り返す【家族】って言葉は、自分たちのために使えば使うほど、とても空虚なものに聞こえてしまうなぁと思った。家族としてちゃんと成立してたら、改めて言う必要はないんだ。成立していると信じたいんだろうけど。
そう、これは深く暗い闇を持つ【家族】の物語。程度の差こそあれ、そこら辺に転がってない話ではない。
これを観たら、もしも岡崎京子の
”ヘルタースケルター”が実写映画化するなら、りりこ役は佐藤江梨子しかいないと思える。