北村薫著、”玻璃の天”。
昭和初期の帝都を舞台にした【ベッキーさん】シリーズ、第二巻。【わたし】であるお嬢様、花村英子とその運転手のベッキーさんこと別宮女史のちょっとした謎解き物語。と同時にそれぞれの葛藤や成長の物語であったことには、読後気付いた。ちなみにこれに続く第三巻、”鷺と雪”が直木賞受賞作。
この頃の文化や日常、それも上流階級のものを丹念に調べてあり、それらが背景になって物語に説得力を与えている。この頃のお嬢様方が『うれー』とか『おすてー』って言葉を使ってたなんておもしろすぎる。『うれー』は『嬉しい』で『おすてー』は『素敵』ってことだそう。こんなことがサラッと書いてあるから贅沢だなぁと思う。(ついでに、校内の挨拶は『ごきげんよう』と『おそれいります』の二つで事足りるらしく、『おはよう、こんにちは』や『ありがとう、すみません』は使わないらしい。)
さらにはある登場人物が語る【神】という存在についての洞察。これを読むと普段深く考えたことがない神や宗教ってものについて考え始めてしまった。そんなきっかけになるのもいい小説ならではだ。以下、その台詞。
『・・・神っていうのは、限り無く無力で、哀れなんだろうな。だからこそ、その悲しみを知る目で、人を見つめる。・・・そういう目で見つめられるから、人は救いを感じられるんじゃないかな。』
主人公たちの行く末に興味があるのはもちろんだが、知識や考えるきっかけを与えてくれるという意味でも、最終巻である第三巻、”鷺と雪”を読むのが楽しみだ。
「ごきげんよう。」