いしいしんじ著、”雪屋のロッスさん”。
31コの小さな話が詰まった短編集。1コ1コのタイトルが”なぞタクシーのヤリ・ヘンムレン”だったり”クリーニング屋の麻田さん”だったり”雨乞いの「かぎ」”だったり、”(職業・仕事)の(名前・呼び名)”になっている。そんな人(や人じゃないもの)たちがいる架空の町に迷い込んだよう。
印象に残った話を3コばかし。
”風呂屋の島田夫妻”。職人の心意気と長年連れ添った夫婦の愛がいい。こんな夫婦に憧れる。
”ブルーノ王子と神様のジョン”。公園に住んでるブルーノ王子(自称)が言う『案ずるな。すべての臣民と家来を、災厄から守る責任を、王子たる余は有しておる』は、現実の現在の我が国の首相が今、力強く言うべき言葉。これが言えたらこの話のラスト同様、国民の信頼と感謝を得られるのに。
”玩具作りのノルデ爺さん”。これは震災以降の今読み終えるとかなり切なく悲しい。だけれども、そこにある深い深い愛情に静かに心打たれる。非業の最期を遂げてしまった方々のご冥福を心から祈らずにはおれない。
僕がこの町の住人だったら【呑み屋のミズガクさん】として、どんな物語になるんだろう。ついそんな想像をしてしまう。