星野智幸著、”俺俺”。装画は石田徹也の”燃料補給のような食事”。
表紙の絵に惹かれて買ったこの本。読みながらこの表紙しかありえないと思った。
主人公はひょんなことから他人の携帯電話を手に入れてしまう。捨てようと思ったが、かかってきた電話につい出てしまった。そして流れでオレオレ詐欺をしてしまい・・・。
読み始めはサイコホラーなのかと思ったがさにあらず。しかしながらサイコホラーなんかよりもっと怖い俺俺ワールドが繰り広げられていった。俺は俺であいつも俺で。あいつもそいつもどいつもこいつも俺俺俺俺俺・・・。なーんか頭グチャグチャになるー。うぬー。
にしてもこの装画である。もう、本屋でたまたま石田徹也の画集をパラパラと眺めた瞬間から、嫌ーな感じをビンビンに感じていて、それなのに本屋に行くたびに、画集のコーナーの前に立つたびに手に取ってしまう自分がいた。
画のモチーフになっている人物はおそらく作家自身で、焦点の合わない目でどこかを、何かを見つめているのかいないのか。そこに描かれている姿はどれもこれも【孤独】を具現化したものとしか思えない。
そこにシンパシーを覚えるのか、近親憎悪なのか、嫌悪感を持ちながらも手に取ってしまう私。いや、俺。
てことは、俺も間違いなく俺俺ワールドの住人てことだ。俺で溢れかえるこの世界で俺と俺と俺と俺たちと共に生きていこう。俺俺俺俺俺・・・。